「お受験箱」の威力と長女合格の勢いを駆って、こんどは長男の受験に邁進しようとしたところ、思わぬ障害に出会った。「娘はいやいやながらも、まだ素直だったと思う。問題は息子だったわ。あの子にはほんとに手こずった」頭をふりながらMさんはため息をついた。娘の受験勉強中、四歳年下の息子は一歳。驚いたことに、母親が姉の勉強を見ている間、息子は邪魔もせずおとなしくテレビやビデオを見て待っていたという。その反動からか、お姉ちゃんの受験が終わったとたん赤ちゃん返りしてしまうし、かわいそうだったという思いがあるためについ甘やかしてしまったせいもあって、いざ四歳になって、上の子と同じ態勢で受験勉強をはじめさせようとしたら激しい抵抗にあった。「上の子はけっして楽しそうではなかったけれど、きつく言えば机の前にしぶしぶ座って言われたことをはじめました。ところが下の子は、まず座らせるだけで三十分くらいかかってしまうんです。『お受験箱』を私が持ってきただけで、サーツと逃げちゃう。その逃げ足の速いことったらないの。主人と『もし試験に五十メートル走があったら、”お受験箱”を見せるだけで、まちがいなくダントツで優勝して合格だ』と言ってました」
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