はじめ、これは痛快な密輸かと思っていたが、ターミナル前広場のいたる所で堂々と荷物を広げ、計量しているところを見ると、裏貿易というわけではなさそうだった。フェリーにも重量制限があり、それを超える分を体に巻きつけるということらしい。もっとも煙草やスニーカーは偽物の臭いがぷんぷんするから、違法なのかもしれなかった。身軽になった男は、ゆっくりとサンドイッチを頬張っていた。計量をしていた男が、鞄のなかから札束を出して男に渡した。
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一枚、一枚数えているから僕らにもその金額がわかってしまう。「五十万ウォン。日本円で五万円ってとこか。中国へ行って荷物を仕入れて帰ってくるだけで、最低でも四日はかかるだろう」「仕入れ値を引いたら、いくらぐらい儲かるんでしょうね」H君はこれからはじめようとしている仕事のことを考えているのかもしれない。でも、運び屋ってことはないだろう。「でも、待てよ。彼らは中国へ行くとき、韓国の物資を持ち込むわけだろ」「収入は倍……」午後四時にフェリーのチェックインがはじまった。そして、そこに長い列をつくったのは、やはりもこもこに着込んだ運び屋たちだった。カートに積んだ荷物も膨大である。彼らは何日か前、中国から運び込んだ荷物を、ターミナル前の広場で計量してもらっていたのに違いなかった。僕らはその荷物に押されるようにして、丹東行きの『東方明珠号』に乗り込んだのだった。