「どんどんスタジオへ送りこんで歩かせて」と頼みながら、肌、金髪、脚のきれいな人などと写真を注意深く眺めながら、十数枚を選ぶ。アシスタントが、背の高さ、髪の色、靴のサイズなどをチェックして、「こんなに足の大きい人は困ります」とコメント。オートクチュールの作品には、それぞれに合わせて靴も新調する。コレクションは、世界のあちらこちらを旅するので、いつも同じモデルというわけにはいかないのである。日本人には想像もできないほど、足の大きいモデルがいる。スタジオには、何カ月も前にオーダーした新しい布地ができ上がって、積み上げてある。新鮮な色どりが、一月の冷えたパリの空気のなかで、そこだけ春のように輝いてみえる。ハウスモデルのディアンヌが白いもめんのガウンを着て、いつでも仮縫いに立てるように、静かに待っている。オートクチュールのアトリエは二つにわかれている。一つはタイユール専門。チーフは男性である。もう一つはドレス中心で、柔らかい布地を扱う立体裁断や、指先を使って仕立てる繊細なドレープなどが得意。主任は女性である。