三学期は、苦手な証明問題を解き続けました。来る日も来る日も証明問題の演習です。テスト直前には、学校のプリントを何度もチェックしました。出題されそうな問題を選んで、何度も何度も問題を解いてもらいました。そしてテストの一週間後、生徒が机の上に答案用紙を置いていたのです。それまで、「テストは戻ってきたの?」と聞けば、「家に忘れた」がお決まりでした。そんな生徒が、自信を持って机の上に置いていたのです。点数は七八点。「がんばればできるんだね、先生」生徒の目は活き活きとしていました。それ以降、落ち着きを取り戻し、休むことなく塾に来ては演習を繰り返しました。宿題も欠かさすしてきました。いよいよ受験です。しかし、結果はよくありませんでした。志望校に入れなかったのです。私は思いました。かつて七点をとったときのように、また絶望的になってしまうのかな、と。しかし、私も彼も、ここであきらめませんでした。彼は高校入学後も個別指導塾に通い続け、『一年の中間テストでは学年で一番をとったのです。数学以外の教科も、何も言わなくても勉強をするようになっていきました。高校3年生になったある日、彼が言いました。「牧場で競走馬を育てる仕事がしたいんだ。いまの成績なら推薦で大学に行くこともできる。先生はどっちかいいと思う?」「自分の思うようにしなさい」私はこう答えながら、とてもうれしかったのです。あれだけ勉強をしなかった生徒が、いまは自分で将来のことをしっかりと考え、生きようとしている。この生徒はもう一人で生きていくことができる、と確信しました。その後、彼は卒塾していきました。しばらくしたあと、彼から連絡が入りました。いま牧場で働いているというのです。「先生にはとても感謝しているよ。先生から最後にもらった名札は、いまも大切に持っているよ」人はだれしも、やれば必ずできる、あきらめてはいけない、講師にとって大切なのは根気強く生徒のやる気を引き出してあげること私は、彼とともに走り続けたこの数年間で大切なことを学びました。
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